日本刀は日本の伝統文化を代表する芸術品の一つです。
その魅力を世界に発信し続けている人物がいます。
イギリス出身の日本刀研究家・ポール・マーティンさんです。
大英博物館での経験を経て、世界的な専門家へと成長した彼の軌跡を詳しく見ていきましょう。
本記事では、彼の驚きのキャリアと、日本刀文化を世界に伝える情熱に迫ります!
ポール・マーティンの日本刀との出会い

ポール・マーティンさんは、日本刀の美と精神性に心を奪われ、世界を代表する日本刀研究家として活躍しています。
日本文化との出会い
7歳の時に父親の影響で空手を始め、武士道やサムライ文化に親しんでいたポール・マーティンさん。
その実力は本物で、最終的にはイングランドの空手ナショナルチームに入り、軽量級で3度のチャンピオンに輝くまでに成長しました。
10代の頃には、黒澤明監督や高倉健出演の映画を通じて、侍と日本刀への憧れを強めていきました。
日本刀に興味を持ったのは10代の頃。黒澤明監督や高倉健さんの映画で侍が腰につけている刀がかっこいいなと感じたのが始まりでした。
出典:NHKグループモール
転機となった28歳
そんなポール・マーティンさんに転機が訪れたのは、28歳の時。
大英博物館の警備員として勤務中、日本部門のギャラリーで初めて本物の日本刀を目にしたのです。
そこには、「日本刀は単なる武器ではなく、宗教的・文化的意味を持つ崇高な芸術品である」という解説が添えられていました。
美しい刃文、歴史に刻まれた重み、精神性の深さに強く感動したポール・マーティンさんは、その瞬間、日本刀に心を奪われます。
さらに、もう一つ大きな驚きがありました。
ギャラリーにいた人が、この部門の責任者は日本刀の専門家であると教えてくれました。私はとても驚きました。その時まで、そのような職業があることさえ知らなかったのです
出典:Arab News
日本部門の部長を務めていたビクター・ハリス氏は、イギリス人ながら日本刀に精通する第一人者。
やがてポール・マーティンさんの師匠となった方です。
この出会いをきっかけに、「自分もこの道を志したい」という強い決意が芽生えます。
そして、この瞬間が、ポール・マーティンさんの人生を大きく変えることとなったのです。
その後、日本刀の勉強と日本語の習得を開始。
努力を重ね、やがて大英博物館で日本部門の学芸員に抜擢され、日本刀や甲冑の管理を担当するまでに至ります。
まさに運命ともいえる出会いが、ポール・マーティンさんを日本刀の世界へと導きました。
努力を惜しまない姿勢に、心から敬意を表したいですね。
世界を舞台に活躍する日本刀研究家へ

日本刀の魅力に心を奪われたポール・マーティンさん。
しかし、当時は警備員から学芸員へ昇格した例はなく、「前例がない」と告げられます。
それでもあきらめなかった彼は、「意欲をわかってもらうのが肝心だ」と考え、夜間部で日本語を勉強したいと申し出ます。
その熱意が認められ、人事部長の後押しもあり、規則が変更され、学芸員への道が開かれました。
「部長は『人生の転機ね』と言って、私が応募できるように規則を変えてくれたのです」部長の前例にとらわれない考え方とポール自身の積極性が実り、学芸員への転向が認められた。
出典:Linkedin
その後、大英博物館の日本部門で正式に学芸員として勤務し、日本刀や甲冑の管理・展示を担当。
日本各地の博物館や神社にも足を運び、実際に刀剣に触れ、押形技術も身につけました。
こうした経験を通じて、単なる知識だけでなく、刀に込められた精神性や歴史への理解を深めていったのです。
さらなる知識を求めて、カリフォルニア大学バークレー校大学院へ進学。
日本語・古文・漢文を学び、アジア学の修士号を取得しました。
さらにキャリアを重ね、ロサンゼルス・パシフィックアジア博物館の日本刀展示プロジェクトにも参加。
そして2004年、日本に拠点を移し、東京を拠点に本格的な日本刀文化の普及活動を開始します。
ポール・マーティンさんは、大英博物館での経験を基に、日本刀研究家として幅広い活動を展開しています。
- 公益財団法人日本刀文化振興協会の評議員・幹事を務める
- 国土交通省認定の専門家として活動
- NHK教養番組『趣味どきっ!刀剣Lovers』で講師を担当
- 日本刀専門書の執筆・英訳、DVD制作に携わる
- 外国人向けの刀剣修復・鑑定・購入アドバイスを行う
2006年には日本刀鑑定会で外国人初の優勝、2018年には正月鑑定会で2位入賞という快挙も成し遂げました。
まさに、世界を舞台に活躍する日本刀研究家の第一人者と言える存在です。
日本刀に対する深い理解と鑑識眼の高さを証明し、世界的な専門家としての地位を確立しました。
ポール・マーティンが語る日本刀の魅力

世界的専門家となったポール・マーティンさんは、日本刀の魅力について次のように語っています。
海外のSwordは磨くと鏡のようになりますが、日本の刀は研ぐと木の板のような肌目や刃文がとても美しい。そして日本刀には精神が込められていて、人間の感情を動かす力がある。そこが魅力的で面白いところですね。
出典:NHKグループモール
ポール・マーティンさんが最も強調するのは、日本刀の「美」と「精神性」。
日本刀は単なる武器ではなく、深い精神性と芸術性を宿す存在だと語ります。
特に刀剣には3つの要素があり、それらが完璧に調和したとき、刀は「傑作」とされます。
- 刃の形状
- 地鉄(表面の模様と色合い)
- 刃文(刃の波模様)
地鉄や刃文に表れる模様は、波や雲など自然の景色を思わせ、日本人の自然観や宗教観とも深く結びついています。
日本刀を通して、自然、歴史、精神性を感じ取る──
それこそが、日本刀の本当の魅力なのだと、ポール・マーティンさんは教えてくれます。
刀に込められた職人の技術や精神性、歴史的背景を知ることで、日本文化の奥深さを感じ取ることができるのです。
自然と精神を映す日本刀へのまなざしには、ポール・マーティンさんの深い敬意と情熱が感じられますね。
まとめ
ポール・マーティンさんは、偶然の出会いをきっかけに、世界的な日本刀研究家への道を歩みました。
彼の軌跡は、情熱と努力が専門性を高め、文化の架け橋となりうることを示しています。
そして、日本刀の美しさ、精神性、そして自然観に魅了され、その魅力を世界へと発信し続けています。
また彼は、これから日本刀に親しみたい人に向けて、「できるだけ多くの名刀を実際に見ること」を勧めています。
本物に触れる経験が、刀剣の美しさや価値を見極める目を養い、より深い理解につながるからです。
ポール・マーティンさんの軌跡を通じて、私たちも日本刀の魅力を再発見し、この貴重な文化遺産を守り継いでいく意識を高めていきたいものです。
まさに運命ともいえる出会いが、ポール・マーティンさんを日本刀の世界へと導きました。
努力を惜しまない姿勢に、心から敬意を表したいですね。
それでは、ありがとうございました!
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